ピカードのMHF日記

ピカードのMHF日記

ピカードによる、MHF(モンスターハンターフロンティアオンライン)の日記

岡部「モンハンだ!」



* 注意 *

今回は、「Steins;Gate」(シュタインズ・ゲート)を舞台としたものです。


内容は、ゲーム・アニメ本編の重大なネタバレが含まれます。

これからゲームをやろう・若しくはアニメを観ようという方はご注意ください。

ちなみに、トゥルーエンド・アニメ最終回の後のお話です。


また、かなりの長文です。お時間あるときにお読みください。









秋葉原を拠点とする「未来ガジェット研究所」。それはとあるビルの2階にある。


その研究所へ続く階段を、水色のワンピースを着た一人の女性が登っていた。

手には近くのスーパーのビニール袋。中には注文されたドクペに、ゼロカロリーコーラ、プリン、そして女性のお気に入りの「ジューシーからあげナンバーワン」が入っている。

ビニール袋をならしながら階段を登り、「未来ガジェット研究所」入り口前で止まる。

女性はノブに手をかけ、元気よくドアを開いた。

「トゥットゥルーー♪」


ダル「おう、まゆ氏、おかえりだお」


岡部「フゥーーッハハハハハ!よくぞ帰ってきたまゆりよ!知的飲料は買ってきたか!?」


まゆり「まゆしぃ☆は、買い出しくらい朝飯前なのです!はい、オカリン」


岡部「おう、すまないなまゆり!」


紅莉栖「ありがとうまゆり。私のプリンまで買ってきてもらっちゃって…」


3人は、それぞれパソコンの前に座り、ゲームパッドを手に持っていた。


ダルは、以前からラボにあるデスクトップの前に座り、


そして、岡部と紅莉栖は、それぞれ最近購入したノートパソコンをテーブルの上に置き、向かい合うようにして座っている。


ダル「牧瀬氏、早くプリンを食べて続きをするお!」


まゆり「3人とも、それぞれパソコンの前に座って…何をしているの〜?」


岡部「モンスターハンターフロンティアオンラインだ!まゆりもやってみんか?今、俺、ダル、助手の3人だから、もう1人いるとちょうどパーティ結成なのだが」


まゆり「まゆしぃ☆は、キリン装備のコス作りで充分なのです〜」


紅莉栖「助手ってゆーな岡部!…しかし、片手剣って使い易いけれど、いまいち威力が低い気がするのよね」


ダル「片手剣の良さは、状態異常値の高さと、アイテムを自由自在に使えるところだお!ダメージソースは僕のガンランスに任せるんだぜ!」


まゆりはダルが座っている前のパソコンをのぞき込む。


まゆり「わぁ〜…ダルくんのガンランスはいつみてもゴツゴツだねぇ〜」


ダル「まゆ氏、今のセリフで『ガンランス』という言葉だけ抜かしてもう一回」


岡部&紅莉栖「言わせんなHENTAI!!」


まゆり「えぇ〜?ダルくんのはいつみても…」


紅莉栖「まゆり、言わなくていいの!」





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岡部「さぁて!助手がプリンを食べ終わったところで、クエスト回しの続きをしようではぬぁいかっっっ!」


紅莉栖「全く…一時帰国したと同時に『ノートパソコンとジョイパッドを持ってくるのだ』とか言うから何かと思えば…。
    こんなゲームにつきあわされるハメになるとは…」


ダル「そんなこといって、いそいそとノートパソコンとMHF推奨ゲームパッドを買って、すぐさまアカウント取得した上、凄い勢いでハンターランクを上げているのを見ると、相当ハマっているように思われ」


岡部「言われて即座にノートパソコンが買えるとは…このセレブセブンティーンめ…!」


紅莉栖「う、うるさい!セレセブいうな!」


ダル「大方芸能人がよくテレビCMでやってるのを見て興味をもっていたんだお」


岡部「このスイーツ(笑)がっっ!」


紅莉栖「もう、さっきからいい加減にしろ!ほら、さっさと始めるわよ!」


岡部「いいだろう、この狂気のンマァァッドサイエンティスト!鳳凰院凶真のっっ!華麗なる大剣捌きをみせてやるぅぁっっ!」


ダル「中二病乙!」


紅莉栖「ハンターネームもしっかり『鳳凰院凶真』なのよね…」


岡部「やかましい蘇りし者(ザ・ゾンビ)よォ…お前のハンターネームなど、『クリス』ではないくぁっ!そんなにクリスティーナという呼び方が気に入ったのか?」


紅莉栖「し、仕方ないじゃない!本名の漢字をそのまま使うわけにもいかないし…」


岡部「『栗御飯とカメハメ波』じゃなくていいのかぁ?んん?」


紅莉栖「だまれ!」


岡部「ぬるぽ


紅莉栖「ガッ








    はっ…。




    く、くそ…」



岡部「ヌァーーーーッハッハハハハハハッッ!アメリカからでも@ちゃんねるは未だに続けているようだなクリスティーーーーンヌッよ!

   その様子だとリアルではろくに友だちもいないのであろう!」


ダル「今日の『お前が言うな』スレはここですか…っと」


まゆり「あの〜。
    オカリンたちはクエストに行かないのですか〜?
    まゆしぃ☆は、チクチク縫いながらも、いつまでたっても3人の話が進まないので心配なのです」


紅莉栖「そ、そうね!さあ、次は岡部の希望よ!どこに行きたいの?」


岡部「…なんだか誤魔化された気もするが…まあいいだろう…よし、俺の希望はハードコアの、変種ヴォルガノスだ!」


ダル「HC変種ヴォル〜?なんでそんなの行きたいん?」


岡部「HCのヴォルガノスってのは、俺はまだ行ったことがないのだ。SR上げも兼ねてな」


紅莉栖「オッケー。じゃあ最初の罠は私が設置するからね。麻痺剣でいくわ」


ダル「そして痺れたところを僕の竜撃砲でドカァーーンと!」


まゆり「あっ、ダルくん竜撃砲するの〜?まゆしぃ☆、あれ好きなんだ〜。
    ドカァンってするとき見せて〜」


ダル「…まゆ氏、『ダルくんの見せて〜』ってもう一回」


岡部「そんな言葉は言っておらんだろうがっ!」


紅莉栖「自重しろHENTAI!!」












岡部「……うぉおおっっっほん!それではこれより、クエストを開始する!
   作戦名は…」


ダル「オカリン、早く出発するお」


岡部「ぬぁっ!?ちょ、ちょっとまて、作戦名は、オペレーション…」


紅莉栖「はいはいワロスワロス。さっさと行かないと日が暮れちゃうわよ」


岡部「貴様ら、俺の話を聞けぇぇっ!」






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岡部「ヴォルガノスの元についたな。閃光玉でこっちに気づかせる!」


紅莉栖「しまった…。クーラードリンク忘れちゃった…」


ダル「牧瀬氏、僕のを1個あげるお」


紅莉栖「ありがとう橋田。」


『クリス』が、クーラードリンクを飲み干す。


ダル「あお…牧瀬氏が、僕の白いドリンクを一滴残らず飲み干しているお…。
   ありがとうございます!」


紅莉栖「ああもうっっ!!」





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戦闘が開始された。


ヴォルガノス変種HCが、空高く飛び上がる!


岡部「むっ。ボディプレスか!」


紅莉栖「なら、落ちてバタバタしているところに斬り付けてやる!」


ダル「あっ、牧瀬氏、待つお!」


ダルの声は紅莉栖に届かず…『クリス』は、ボディプレス着地地点と思われる場所に近づく。


しかし、紅莉栖の予想とは異なり、ヴォルガノス変種HCはすぐその場には落ちてこなかった。


代わりに落ちてきたのは溶岩だった。もろに喰らう『クリス』。


岡部「ぬお!?これは!」


紅莉栖「えええっっ!普通と違う!HCだからか…って、あ…」







<< クリスは力つきた >>








紅莉栖「うわあああああ!!!」


ダル「どんまい、牧瀬氏」


岡部「気にするな助手よぉぉ…!」


まゆり「紅莉栖ちゃんやられちゃったね〜…でも、まだクエスト失敗じゃないから。がんばって〜!」


紅莉栖「うう…あ、ありがとうまゆり…」


岡部「…ダルよ、慰めているのは俺たちもなんだが…なぜ助手はまゆりにだけお礼を言うのだ?」


ダル「多分照れくさくて言えないんだと思われ。ツンデレっしょ」


紅莉栖「う、う、うるさいわね…!よし、もうさっきのは引っかからないわよ!



    …あと、ごめん…クーラードリンクもう1個頂戴…」







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ダル「ふう…なんとか倒したお」


岡部「やはりHCは、普通と違うな…。かなり手強くなっている。いやらしい動きばかりだ」


ダル「男の『いやらしい』セリフはいりません。…まあ、体力が少ないんだから、圧倒的火力でさっさと倒すべきと思われ」


岡部「ぬぁにを言う!きっちりモンスターの動きを把握して、隙を見て攻撃していくのが楽しいのではないかっ!」


ダル「さっさと数こなして、HC素材とSRポイント集めまくった方がいいに決まってるだろ常考


岡部「この効率厨がっ!もっと1回1回のクエストをだなぁ…楽しんでこそ長続きするのだっっ!」


紅莉栖「はあ…いまいち活躍できなかった気がする」


まゆり「そんなことないよ〜。ヴォルガノスを麻痺させてたじゃない〜。
    まゆしぃ☆は、紅莉栖ちゃん頑張ったと思うのです」


紅莉栖「……まゆり……」





そんな風にクエスト後に会話をしている時、岡部は自分のノートパソコンの画面右上に、メールのマークが点滅していることに気づいた。



岡部「(むっ?どこかのハンターからのショートメールか…一体誰だ…)」













発信者:













      『ジョン・タイター











岡部「ぬぁぁぁぁぁんだとっっっっ!!!」


ダル「?オカリン?どうしたん?」


岡部「い、いや何でもない…!」


まゆり「どうしたのオカリン…まゆしぃ☆にも見せ…」


岡部「い!いや!まゆりは見るな!そのまま助手の隣で衣装を作っているのだ!!いいな!」


まゆり「ふぅぇーん…オカリンが冷たいのです…」


岡部「す、すまん…とにかく、ちょっと待ってて…い、いや、ダルと助手は二人でどこかクエスト行っててくれ…!」


紅莉栖「………………?まあいいけど…。
    行きましょう、橋田。次は橋田の希望よ」


橋田「うい〜」








岡部「(どっ…どういうことだ?!なぜ今更『ジョン・タイター』からメールが?!
    ま、まずはメールを開いてみよう…)」







発信者:ジョン・タイター


内容:初めましてになるのかな、岡部倫太郎。

   こっちは2036年ディストピアからなんとかしてMHF版のDメールを送っている所だよ。

   まもなく過去にログインもできると思うから、今度は個人チャットで話をしよう。

   少し待っててね。




岡部「(これは…この話し方はっっっ…!
    そんな…そんな馬鹿な!)」




その時、岡部のパソコンから甲高い効果音が聞こえた。誰か他のハンターから、個人チャットが送られてきた音だ。


送ったのは、言わずもがな『ジョン・タイター』だった。


ジョン・タイター > うぃ〜っす、岡部倫太郎。











ジョン・タイター > ショートメールは届いた?父さんもそこにいるのかな?








岡部はゴクリと唾を飲み込んだ。そして震える手でキーボードを操作し、『ジョン・タイター』に個人チャットを送り返す。





鳳凰院凶真 > 貴様は…





鳳凰院凶真 > そのしゃべり方は、まさか、阿万音鈴羽…バイト戦士かっ!?





ジョン・タイター > あっ、わかっているんだね。未来のオカリンおじさんに聞いたとおり、前に、別の世界線であたしと出会ってるんだね。




鳳凰院凶真 > な、なぜ…もうシュタインズ・ゲート線になったから、ディストピアもなくなったはず…!
        一体これはどうしたことだ!



ジョン・タイター > とりあえず、あたしのキャラのいる場所に来てよ。直接話をしよう。
           父さんと、牧瀬紅莉栖はそこにいる?一緒に連れてくる?


鳳凰院凶真 > い、いや、今2人ともクエストに行っている。
        2人を連れて行くのはまずかろう…別の世界線については何も知らないし、
        運命探知の魔眼(リーディング・シュタイナー)がある俺だけが行った方が話は早い。


ジョン・タイター > わかった。じゃあこっちへ来て。ココ!






岡部はマウスを動かし、『ジョン・タイター』の発言の「ココ!」をクリックする。

暫くすると別のメゼポルタ広場へとジャンプした。

移動した先のメゼポルタ広場に着き、広場内部に入ると、岡部は違和感を感じた。


辺りを見回してみると、すぐにその違和感の正体が分かった。

ハンターが全く見あたらないのだ。いや、ハンターだけではない。総合ショップや食材屋、調合屋の店員もいない。受付嬢も1人を残していなくなっている。



岡部「(ここはいったい…どこだ?)」




『管理者用のメゼポルタ広場へようこそ、岡部倫太郎。』



ゲーム内の岡部…鳳凰院凶真に近づくハンターがいた。

全身見るからに上等な防具に身を包み、これまた見たことのない強力そうなハンマーを背負った女性ハンター…その頭上には、『ジョン・タイター』という名前が表示されている。



ジョン・タイター(阿万音鈴羽)『ここはね、MHFの管理者がテスト用に作った特別なサーバだよ』


鳳凰院凶真(岡部倫太郎)『なぜバイト戦士がここに…!?この時代に!!』


ジョン・タイター『ショートメールでも言ったように、過去の時代にログインしているんだ。
         実は、未来でタイムマシンが開発されて、ディストピアが構築されてしまったんだ。
         岡部倫太郎。君が以前なくしたはずの世界線の、ね』


鳳凰院凶真『なんだと…!?』


ジョン・タイター『あたしたちの組織…ワルキューレは、ディストピアを破壊しようと抵抗しているんだけれど、どうしてもうまくいかない。
         そこで、タイムマシンが開発されたきっかけを、元から絶ち、あたしたちの言う現在…つまり、君たちの言う未来を変えることにしたんだ。
         橋田至…お父さんが発明した、過去のMHFにログインするマシンを使ってね』


鳳凰院凶真『話がよく見えない…!なぜ、過去のMHFにログインすることが、未来を変えることに繋がるんだ?
      タイムマシンを開発し、ディストピアを構築するのはやはりSERNなのか?
      未来のラボメンはどうなっている?』


ジョン・タイター『順を追って説明するよ。
         MHFは、この先技術の進歩に応じて、インターフェースも進化するんだ。
         岡部倫太郎たちの時代では、パソコンにゲームパッドをつないでそれでプレイしているけれど、
         もう少し先になると、「ナーヴギア」というヘッドギア型のマシンに変わる。


         「ナーヴギア」は、茅場晶彦という人が作ったVR機器で、まあ平たく言えば、
         そのヘッドギアを被ると脳波とリンクして、人はゲームの中に本当に入り込むことができるの。
         触覚・嗅覚など、本物さながらに感じることができるんだ』


鳳凰院凶真『凄い発明だな…未来ガジェットにも負けていない…!』


ジョン・タイター『うん。でも、その技術があだとなった。
         MHFを運営してるカコプンオンラインが、SERNと結託して、タイムマシンの開発を始めるんだ。


         さっき、「ナーヴギアは脳波とリンクして」って言ったよね?
         その脳波とリンクすることで得られるデータを、カコプンオンラインが解析・提供。
         SERNがそれを元に、人の脳をある程度自由に操れるようになったんだ。


         そして、その技術を使い、カコプンオンラインとSERNが協力して、牧瀬紅莉栖を洗脳…タイムマシンの開発に従事させたってわけ』



鳳凰院凶真『…なん…だと…。
      助手が…洗脳されて…!』


ジョン・タイター『「ナーヴギア」が発明され、ゲームなどで生かされ、MHFのナーヴギア版が発売されたのは2022年。
         しかしその危険性が露わになり、ナーヴギアは翌年までには全て回収。代わりにセキュリティ強化などが施された別の製品が出ているんだけれど…。
         もう遅かった。


         牧瀬紅莉栖は、2022年には重度のMHFプレイヤー。発売直後からディープにやっていたみたいなんだよ。
         そこへ、密かに研究・結託していたカコプンオンラインとSERNに目を付けられた』


鳳凰院凶真『ふぅ…む…。それだと何か不自然ではないか?
      「ナーヴギア」なる脳波とリンクする機械ができたのが2022年で、すぐに回収されているのだろう?
      「密かに研究・結託していた」と言ったな?まるで「ナーヴギア」が出る前から研究してきたような言いぶりだが』



ジョン・タイター『その通り。もちろん、「ナーヴギア」が出たことで連中の研究や実戦する手段は一気に進んだよ。
         しかしもともと…岡部倫太郎の言うとおり、脳波とか、洗脳の研究は前から進められていたんだ』


鳳凰院凶真『…い、いつからだ!?』


ジョン・タイター『今、この時期から…!だからこそ、あたしは今この時にタイムトラベルしてきたんだ』


鳳凰院凶真『なんだと…!
      バイト戦士よ、今、この時期からそんな研究がなされているというのに、のんびりMHFなんてしていていいのか!』


ジョン・タイター『それが、いいんだよ』


鳳凰院凶真『!?どういうことだ?』


ジョン・タイター『カコプンオンラインは、今度アップデートする内容をきっかけに、プレイヤーを管理する考えに変わっていくんだ。


         今、この管理者用メゼポルタ広場から受けられるクエストは、次のアップデートから出るモンスターのもあるんだけれど、
         その新モンスターのアルゴリズムが特殊でね。
         プレイヤーの行動から考え方を読み取り、それに合わせてアクションしてくるの』


鳳凰院凶真『それは…随分強そうだな…やりがいがありそうだ』


ジョン・タイター『うん。実際とんでもない強敵で…いわゆる「プロハン」って言われる人たちも相当手を焼いたみたい。
         …そのため、多くのハンターがそのモンスターに挑んだ。そうして何百回・何千回とハンターとの戦闘を繰り返していったんだ。
         調べたところによると、カコプンオンラインはその時の人間の考え方・行動を記録していったらしいのね。今後さらにバージョンアップする時に生かすために。


         初めの頃は、純粋に次のバージョンのためだけにそのデータを集めていたらしいんだけれど、そこにSERNが目を付けた。
         SERNはカコプンオンラインに接触。人間の反応データを別の道に生かすことを提案。それが…』


鳳凰院凶真『…助手を洗脳する技術になっていったという訳か…』


ジョン・タイター『そう。察しがいいね、鳳凰院凶真』


鳳凰院凶真『それで…どうすればその流れを止められるんだ?
      ダルに頼んでハッキングし、そのモンスターのデータを抹消でもしてもらうか?』


ジョン・タイター『いいや、たとえデータを消したとしても、作った人間はまだいる。
         何か納得するきっかけがない限り、その人がまたモンスターを作り直しちゃうんだ』


鳳凰院凶真『ぬぅぅ…ならば、一体どうすれば…』


ジョン・タイター『そこで、この管理者用メゼポルタ広場。今あたしは、特別にMHFのテストプレイヤーとして潜入してるの。
         その新モンスターをテストプレイで、普通のプレイヤーがあっさり倒してしまえば、カコプンオンラインの開発スタッフは、「このモンスターは使えない」として、実装をとりやめるはず』


鳳凰院凶真『なるほど。しかしよくテストプレイヤーになんぞ紛れ込めたな』


ジョン・タイターワルキューレの仲間で協力しあってね…Dメールをつかったり、元カコプンオンライン社員の情報を聞いたり…』


鳳凰院凶真『そうか…』


ジョン・タイター『とにかく!今から私が受注するクエストを一緒に受けて、新モンスターをやっつけてほしいんだ!
         できたら、父さんと牧瀬紅莉栖も一緒の方がいいかもね。さすがにあたしと岡部倫太郎の2人では厳しい』


鳳凰院凶真『わかった。2人にはうまく言ってここに連れ出してみる』





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クリス『はじめまして、ジョン・タイターさん。この度はお招きいただいてありがとう』


ダル『テストプレイに参加させてもらえるなんて、光栄だお』


ジョン・タイター『こちらこそ、急に呼び出しちゃって。
         …でもね、分かって欲しいのは、これはただのテストプレイじゃないってことなんだ』


鳳凰院凶真『その通りだ。これから始まるクエストは、人類の未来がかかっていると言っても過言ではぬぁい!!』


ダル『またまたオカリン…』


クリス『中二病乙ww鳳凰院さん?wwww』





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急に、現実の岡部が顔を上げた。


岡部「違うんだ、助手よ」


紅莉栖「っ!だから助手ってゆーな…って…」


紅莉栖は、岡部のあまりに真剣な顔に驚いた。これまでにない深刻な顔だ。…そう…どこかで見たような…しかし思い出せない。

ダルの方を見ると、同じように岡部の顔を見て驚いている。ダルも同じような事を感じているようだ。


岡部「わかってくれ、紅莉栖、ダル…」


ダル「わ…わかったお…」


紅莉栖「…と、とにかく真剣に臨めばいいのね?」


岡部「ああ、頼む…!
   …むっ?そういえばまゆりはどうした?」


ダル「さっきオカリンが『ジョン・タイター』と話している間に、『コスができたからカエデちゃんに渡してくる』とか言って出て行ったお」


岡部「そうか。それならそれで構わない。あいつを巻き込むことはないからな…」


ダル&紅莉栖「……………………??」


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ジョン・タイター『じゃあ、クエストを貼るよ。場所は闘技場だからクーラードリンクとかいらない』


鳳凰院凶真『ではいくぞラボメン達よ!これより作戦名、オペレーション・クレイオスを開始する!
      時は来た!今こそ暗黒の未来を打ち破り、世界に安寧を!』


クリス『…………………また中二病発現してるけど、本当に真剣に臨めばいいの?』


ダル『きっとオカリンなりに本気でテンションを上げているんだと思われ』



そして一同は、闘技場へと移動した…。






闘技場のベースキャンプへと到着した一行。
支給品を取り、闘技場内部へと入っていく。
岡部こと『鳳凰院凶真』の手には大剣。紅莉栖こと『クリス』は片手剣。ダルはガンランス。そして阿万音こと『ジョン・タイター』はハンマーを持っている。

どの武器も、新バージョンに合わせて実装される武器の中で、最強のものだ。

ジョン・タイター『新モンスターの攻撃力や体力はそんな理不尽なほどひどくはない。
         問題はそのアルゴリズムだよ。とにかく行動を読んでくるから気をつけて』


鳳凰院凶真『一発勝負だ。一発で倒してこそ、新モンスターの実装を中止できるだろう、行くぞ!』





果たして闘技場の中にいたのは、見た目はどう見てもリオレウスだった。しかし色は、未だ決まっていないのか白。不自然な白さだ。




* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *



紅莉栖「リオレウスか。それだったら動きはわかるわ。いける!!」


岡部「油断するなクリスティーーッヌよ…『ジョン・タイター』が言っていたようにこのモンスターは、ハンターの動きを見て行動を変える…!
   それに新モンスター。新アクションが追加されていてもおかしくはぬぁい!」


紅莉栖「『ティーナ』付けるな!わかってるわよ!」



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そして戦闘が始まった。

ジョン・タイター『あたしがスタンさせる!岡部倫太郎は尻尾を!牧瀬紅莉栖は閃光玉など駆使しながら岡部と同じ場所!
         橋田至は足下から腹を!』


クリス『了解!』


ダル『わかったお!』


鳳凰院凶真『(バイト戦士め…いつもの癖で本名をフルネームで言っているではないか…
       まあいい、俺がうっかり伝えてしまったと言っておけばいいか)』


白いリオレウスが激しく咆哮する。4人はそれぞれの位置へダッシュしていく―――――







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クリスが白いリオレウスの前面に行き、閃光玉を投げようとする。

しかしそのタイミングに合わせて、白いリオレウスが太いビームのブレスを吐きだした!

吹き飛ぶクリス!


紅莉栖「ぬわぁっ!」


岡部「大丈夫か助手よ!!」


ダル「どうも閃光玉を投げたり、罠を仕掛けたりする行動は、すでに学んでいると思われ」






<< クリスは力つきた >>







紅莉栖「なん…だと…」ワナワナ


ダル「一撃で…防具も新バージョンの最強のものなのに…」


岡部「攻撃力はたいしたことないのではないのかっ…!!これはG級どころではないのではっっ…!!」



鳳凰院凶真が、ダッシュして白いリオレウスの尻尾に近づき、抜刀斬りをしかける。

足踏みをしていた白いリオレウスは、突然尻尾を凶真の方に振り出した!

吹き飛ぶ凶真。


ジョン・タイターが力を溜めながら白いリオレウスの頭部に近づくが、その度噛み付き攻撃や火球をはき出すので、上手く攻撃できないようだ。


動きが激しく、ダルが竜撃砲を放つ余裕もない。



岡部「これは…ぬぁんという強力な個体だっっ!!た、倒せるのか…!」


紅莉栖「………………やるしかないんでしょう?
    人類の未来がかかっているんでしょう?」


岡部「…紅莉栖…」


ダル「オカリンがあんな顔をした時は、いつだって重要なことだお。僕はオカリンを信じて、全力でやるお」


岡部「ダル…!ありがとう…!よし…!!」











そして、ついにチャンスがやってきた。


太いビームブレスを吐こうとするそのタイミングで、クリスが白いリオレウスの足下にシビレ罠を設置することができたのだ。


罠を仕掛けるクリスを見て、同時のタイミングで、尻尾に向かって溜め斬りを開始する凶真。


罠の効果時間は短いかと思われたが…意外にもなんとか間に合ったようだ。


岡部「切れろよぉぉぉぉぉぉぉぉおお!!!」


鳳凰院凶真の溜め斬りが、白いリオレウスの尻尾にクリーンヒットする!


そして、白いリオレウスの尻尾が切断された…!


吹き飛び悶える白いリオレウス。その吹っ飛んだ先には、ダルがガンランスを構え、竜撃砲の体勢を既にとっていた。


岡部「頼むぞダルっっっ!」


ダル「オーキードーキー」


しかし白いリオレウスの動きは速い。すぐさま起き上がり、短くなった尻尾をダルに向かって振ろうとする――――


ダルの竜撃砲が失敗に終わったと思われた。だがそれは違った。


白いリオレウスが尻尾を振ろうとしたその瞬間、ジョン・タイターのハンマーたたき付けが頭にヒットしたのだ。


そのまま倒れ込み、スタンする白いリオレウス


ダル「ジョン・タイターさん、グッジョブだお!」


ついに、ダルの竜撃砲が炸裂した!白いリオレウスはもろに喰らっている!


ジョン・タイター『グッジョブ!』


鳳凰院凶真『一気に行くぞ!』










白いリオレウスがゆらりと立ち上がった。


そして、なんどか頭を上下させる。


岡部「(…!?何か来るっっ!これは逃げないとまずいのではぁっ?!)」


すぐにその場を離れる鳳凰院凶真。ダルも、ジョン・タイターも同じ何かを感じ取ったのか、一目散に離れていく。


しかしクリスだけはその場を離れようとしない。必死に足下を斬り付けている。他の3人が感じた何かに、クリスは気づいていないのだ。


岡部「っっ!?助手!逃げろぉぉぉっっ!」


紅莉栖「ふえっ?」




白いリオレウスが、咆哮をした。




ただの咆哮ではない。辺りに金色のオーラと衝撃波を放つ咆哮。

その衝撃波に直撃し、吹き飛ばされるクリス。






<< クリスが力つきました >>





紅莉栖「なんだとおおおお!?」


ダル「どんまい牧瀬氏!」


岡部「こいつ、ここまできてこんな隠し玉を…!」


ジョン・タイター『牧瀬紅莉栖、ドンマイだよ!まだ力つきたのは2回!!』


紅莉栖「うう…私すごい足手まとい…」


ダル「そんなことないお。今のはしょうがなかったお!」


岡部「そうだぞクリスティーヌァ!まだ勝負が決まったわけではないっ!」


紅莉栖「うううう…わかった…」


もはや紅莉栖には「ティーナをつけるな!」と言い返す気力もない…。目の前の白いリオレウスとの闘いに全神経を傾けていて、岡部はそのことに気づいていなかった。





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飛び交う斬撃。うなりを上げる竜撃砲。叩きつけられるハンマー。

闘いは熾烈を極めた。

白いリオレウスは途中からクリスのみを狙うようになった。力つきた回数が多いハンターが一番弱いと見なし、集中攻撃をするようになったようだ。

必死に逃げ惑うクリスと、なんとかカバーしようとする他の3人。

しかし一方で、尻尾も、翼も、頭部も破壊され、白いリオレウスはもはや満身創痍なのは明らかだ。



ジョン・タイターが、ハンマーを白いリオレウスの頭部にクリーンヒットさせる…!

再びスタンする白いリオレウス。そこに飛びかかる鳳凰院凶真とダル!

鳳凰院凶真の溜め斬りと、ダルの竜撃砲が同時に炸裂した時…。









白いリオレウスがうめき声を上げた。



力なく吠え、ついに倒れ込む。



そう、ようやく、白いリオレウスを討伐したのだ――――







ダル「やったお!!やったおーーーーー!」


岡部「フゥーーーーハハハ!!!この狂気のムァァッドサイエンティストにかかれば、どうということはぬぁぁぁい!!」


紅莉栖「……」



画面の中で、ジョン・タイターも叫び声を上げている。



そして、4人は無事メゼポルタ広場へ帰ってきた――――



ジョン・タイター『ありがとう3人とも。いいテストプレイだったよ。
         クエストの様子は録画されているし、結果についてあたしから運営スタッフに報告しておくね』


ダル『とっても楽しかったお!また呼んでくれお!』


ジョン・タイター『それじゃあ、適当なワールドに移動してね。広場入り口から出られるはずだよ』


3人は、メゼポルタ広場の入り口から通常のワールドへと移動した。闘いは終わったのだ。


ジョン・タイター…阿万音鈴音から、岡部の元へ個人チャットが送られてくる。




ジョン・タイター > ありがとう、岡部倫太郎。あとはあたし1人の仕事。




ジョン・タイター > あたしからうま〜く運営スタッフに伝えて、なんとしてもあのモンスターを実装中止にしてみせるよ。








その時。



紅莉栖「…………ちょっと、外の空気を吸ってくるわ…」


ダル「…牧瀬氏?何だか元気ないお?どうしたんだお…?」


紅莉栖「…別に、大丈夫…」


紅莉栖は少しうなだれながら、ラボのドアを開け、外に出て行った。


岡部は、紅莉栖のいつもより元気がないその様子を見て、一瞬不思議に思ったが、すぐに画面に目を戻し、阿万音との会話に戻る。







鳳凰院凶真 > うむ…ご苦労であった、ラボメンNo.008よっっ!



ジョン・タイター > ありがとう。あたしもラボメンに入れてくれるんだね。



ジョン・タイター > それじゃあ、もう少し先の未来で、あたしが生まれてくる時に会おうね!バイバイ!



鳳凰院凶真 > おう!それでは、数年後にな!フゥーーーッハハハハッッ!








終わった。

オペレーション・クレイオスは無事終了したのだ。我々の勝利をもって!

岡部はソファの背もたれにどっと寄りかかり、一息ついた。

――――しかしそれは、仮初めの安らぎだった。












再び、岡部のMHF画面右上に、ショートメッセージ到着を知らせるアイコンが光る。


岡部「(む…。またショートメッセージか…?一体誰からだ?)」


岡部はメニューを開き、届いたショートメッセージ一覧を開く。

新着メールは、複数あった。





岡部「(な…  な…    なんだと…!?!?



    一体これはどういうことだっっっ!



    この差出人は… この差出人はぁぁっっ……!!)」















ショートメール

発信者:






        鳳凰院凶真










岡部「(これは…俺からのメールではないかっっ!?



    なぜ俺に俺からのメールが?



    しかもこの発信日時…数値が滅茶苦茶だ…!?)」





まさか、この鳳凰院凶真は…。


岡部の脳裏に、少し前の出来事がフラッシュバックする。

紅莉栖を助けることに失敗し、途方に暮れていた時に来たあのメール…。

まゆりの声。


「未来のオカリン、渋い声だったねぇ〜〜」












岡部は、自分の鼓動が高鳴るのを感じながら、「鳳凰院凶真」から来たメールを開いた。

複数あるメールを、来た順番に開いていく。




* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *





発信者:鳳凰院凶真




内容:


ショートメールで書ける文章量は少ないので、端的に、そして複数のメールで送る。
俺は、未来のお前だ。
過去の俺よ、よくぞあの白いリオレウスを倒した。グッジョブだ。
さぞ大変だったであろう。仲間との連携がなければ絶対に無理なミッションだった。
だが、まだ脅威は去っていない。











いや、正確には新しい脅威が発現したといっていい。
先に結論を言うと、SERNとカコプンオンラインが紅莉栖を洗脳しタイムマシンを開発する未来は防がれた。
しかし、紅莉栖がタイムマシンを開発する未来は変わっていないのだ。



* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *




岡部「(やはり…やはり、未来の俺からであったか…!
    しかしどういうことだ!
    SERNとカコプンオンラインに洗脳されなくても、紅莉栖がタイムマシンを開発する…だと?)」





* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *





今、この世界線では、紅莉栖がタイムマシンを作ったのは揺るぎない事実だ。
お前も知っての通り、元々は、紅莉栖は洗脳され、無理矢理にタイムマシンを開発させられたはずだ。
しかし、この世界線は違う。
紅莉栖は自主的にタイムマシンを開発したのだ。
それにSERNが目をつけ、紅莉栖を誘拐。タイムマシンを強奪。ディストピア構築に至る。








どうか、今のお前の時代で、なんとか紅莉栖を止めて欲しい。
おそらくポイントとなるのは、前の世界線では、紅莉栖は自分の意志でタイムマシンを開発するつもりはなかったのに、
何故か今の世界線では自分から開発していると言うことだ。
今、紅莉栖のすぐ側にいるお前ならきっとわかるはずだ。頼む。未来を切り開いてくれ。
これより最終フェイズ…オペレーション・イーリスを開始する。
健闘を祈る。


エル・



     プサイ・


      

           コングルゥ。


* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *







岡部「(フッ…。


    未来の俺は相変わらず中二病全開ではないかっ!

    しかし…。


    『紅莉栖のすぐ側にいるお前ならきっとわかるはず』か…。


    いいだろう…。このミッション、きっと乗り越えてみせる…!)」







ダル「牧瀬氏…一体どうしたんだお…顔色悪かったお…」


岡部「…大丈夫だ…。あいつはきっとあそこにいる」


ダル「オカリン…」


岡部「(クエスト中…そしてクエストを負えた後のあの様子…おそらく助手の奴は…)
   ちょっと助手の所へ行ってくる。ダルは何も心配しなくていい。
   そうだな。次のクエストを貼っておいてくれ」


ダル「…わかったお。オカリンに任せるお」


岡部「うむ。戻ってきたら、また3人で狩りに行こう」









〜〜 屋上 〜〜


風に吹かれながら、紅莉栖は柵に手を載せ、秋葉原の様子を眺めていた。

すでに日が傾きつつある。辺りはオレンジ色に染まっていた。紅莉栖の横顔も同様で、美しく彩られている。



背後で、扉の開く音がする。


「やはりここであったか」


振り返らずとも、誰が来たかは紅莉栖にはわかっていた。秋葉原を眺めながら、来訪者の名前を呼ぶ。


紅莉栖「……岡部…」











岡部「助手よ…ダルが心配していたぞ。顔色が悪かった、と…」


紅莉栖「………」


紅莉栖は、岡部の方に振り返り、柵に寄りかかる。


紅莉栖「ふっ、ふん!橋田は本当にHENTAIね、人の事をジロジロ見てからに。
    ちょっとモンハンやり過ぎて疲れただけだってのに、もう」


岡部「紅莉栖!」


紅莉栖「ふぇっっ?(い、今名前で…)」


岡部「………無理をするな。
   ここのところのクエストで、お前は少しずつ苦しみを積み重ねていった。そうであろう…?
   強気なのは、お前の良い面でもあるが…時には辛いことをぶちまけてもいい。そう思わんか…」


紅莉栖「岡部…。






    ……確かにそうかもしれない。
    聞いて、くれる…?」


岡部は静かに頷いた。


紅莉栖「私…いつもモンハンで力つきてばかりでしょ…?
    大してダメージも与えてないし…なんだか足引っ張ってるって感じで…。

    


    さっきなんて、岡部がとても重要だって言っていたクエストだったのに、2回も力つきて…。
    しかもそれが原因で、私ばかりモンスターに狙われるようになっちゃって…。
    それをカバーしてもらうのも、情けないやら申し訳ないやらで…。


    いつもいつもそう。私のせいで失敗になったクエストだってあるでしょ?
    私、モンハンに向いてないのかもしれない。




    …だけど、このままモンハンを諦めるのは悔しいし、岡部達とクエストに行くことは楽しいから、やめたくないの!




    …へへ、だからね、笑われちゃうかもしれないけれど…」


岡部「…タイムマシーンでも開発して、クエスト失敗した時とか力つきた時やり直そうとでも考えていたか」


紅莉栖「っっ!?なんでそれを!?」


岡部「(やはりそうであったか…。これがきっかけでタイムマシン開発を…
    きっかけは些細なものに見えるかもしれないが…助手にとっては大きな心の負担だったのだろう)





   助手よ…」





岡部は一歩一歩、ゆっくりと紅莉栖に近づきながら話しかける。その目は穏やかだ。



岡部「お前の気持ちは痛いほど分かる。
   俺も、野良募集に参加して3回力つきた時は、他のメンバーに申し訳なくて身悶えたものだ…。
   そう、そういう経験は誰にだってある。いうなれば、お互い様なんだ」



紅莉栖「…でも」



岡部「そういう経験を経てハンターは強くなる。毎回やり直せるようだったら、1回1回のクエストの重みが薄れていってしまうと思わんか?」



紅莉栖「…だけど岡部…!私は…私は…!」



岡部「紅莉栖っっ!」



岡部は紅莉栖の両肩に手を置いた。



紅莉栖「ふぇっっ?岡部、近――――」



岡部「それにだ、紅莉栖。
   モンハンのクエストは、効率が全てではない…!


   勿論効率を求めて楽しむという面もあるだろう。
   クエストはクリアするためにあるのだし、それを目指してみんな頑張っているのだから、失敗しないようにすることは重要だ。


   しかし、常に、勝ったか負けたか・力つきたかそうでないかだけで考えていては、視野が狭いとはいえないか?


   少なくとも俺は、紅莉栖と一緒にクエストに行くこと、それ自体が楽しかった。
   きっとダルもそうだ。奴もみんなとクエストに行くことを楽しんでいる。
   さっきの白いリオレウスのクエストは、俺は確かに重要といったが――――人類の未来どうのこうの以前に、実は楽しいという気持ちも少なからずあったんだ」


紅莉栖「岡部……」


岡部「失敗しても気にしすぎるな。
   一緒にクエストを楽しむことに意義があるんだ。
   結果にのみ目を奪われてはいけない。


   失敗したっていいじゃないか。大事なのは、次どうするかということではないか?」





岡部の目を見ていた紅莉栖が、少し目を潤ませながら顔を下げる。



紅莉栖「……そうだね。私も岡部と同意見だ。
    効率求めることも大事だけれど…それだけにとらわれて何もかも見失っちゃいけないよね…。
    なによりゲームだもんね!
    …タイムマシンを作るだなんて、どうしちゃったんだろ私!」


紅莉栖は顔を上げる。その表情は既に笑顔になっている。



岡部「うむ!それでこそ我が助手よ!」



岡部は紅莉栖から手を離し、大袈裟に白衣を翻し屋上出口へと歩き出す。



岡部「フゥーーーーハハハハハハハハハッッ!それではいくぞクリスティーーーーヌァ!!
   まだ見ぬモンスターどもが我々を待っている!
   この狂気のムァッドサイエンティッスト、ほぉぉう凰院凶真様の実力を、とくと見るがいいいぅわぁ!!」


紅莉栖「『ティーナ』つけるなっっ!
    それといい加減その中二病なんとかしろ!!」



紅莉栖も岡部に続いて出口へ向かっていく。


そしてぽつりと呟いた。





紅莉栖「………ありがとう、岡部…」



岡部「んぁ?何か言ったか助手よぉぅ…」


紅莉栖「いっ、言ってない!何も言ってない!
    それに助手はやめい!!もう!」



2人はいつもの様に軽口をたたき合いながら、屋上の出口を抜けていく。


鮮やかな夕焼けに彩られながら、秋葉原の空はどこまでも高く――――広がりを見せていた。そう、人類の未来のように。












完ッッッッッ!